研究概要 |
本研究ではヒスタミンH2受容体遺伝子をクローニングし、これを遺伝子発現ベクターに組み入れ、本来H2受容体遺伝子を持たない細胞系でその機能と受容体調節機構を検討することを目的とした。また受容体機能発現に関わる受容体各機能部位の人工変異受容体を作成し受容体機能や情報伝達に対する影響を調べることも試みた。まずクローニングしたイヌヒスタミンH2受容体遺伝子の発現をChinese hamster ovary細胞で確認したのち、これがアゴニストであるヒスタミン刺激後、急速に脱感作される現象を見いだした。この際受容体数の減少は認められるが、我々が世界で初めて作成に成功した特異抗体による検討では受容体量の変動は認められずまた受容体結合定数の変化も見られなかったことから受容体隔離という機構が脱感作に関与していることをはじめて明らかにすることができた。以上の結果は英文論文として報告した(Biochem.Biophys.Res.Comm.190,1149-1155,1993)。また受容体機能調節に関わる受容体人工突然変異遺伝子を作成し、その影響も調べた。まず受容体の膜への発現に影響すると思われる3カ所の受容体糖鎖結合可能部位を改変することにより、受容体分子は見かけの分子量が減少することからいずれの部位でも糖鎖による修飾を受けていることが明らかになった。これは本年の消化器病学会に報告する予定である。またC末端側の変異遺伝子の作成と発現にも成功しており、現在燐酸化の影響や脱感作現象の有無など情報伝達系や受容体機能調節系への影響を検討中である。
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