研究概要 |
本研究においては,肝細胞癌において発現されるアルファフェトプロテイン(AFP)遺伝子を対象にして,特にAFPの蛋白一次構造をコードする部分で,かつ変異が起きやすいとされるGC含量の高い10,11,12エクソンを中心にその変異の有無ならびにそれらを用いた肝細胞癌の早期診断を試みた.また,純化AFPより直接アミノ末端一次構造の決定もあわせておこなった.部検,手術材料12名から得られた肝細胞癌組織よりクロロホルム-フェノール抽出を行いインタクトのDNAならびにRNAを得ることが出来た.さらに,11番目エクソン開始点5'末端側-82より-59番目,-77より-54番目+176より+198番目,+181より+203番目の4個のプライマーを用いたPCR法にて想定されるサイズのDNAを得ることが出来た.また,mRNAインタクトの状態で精製することが出来た.現在これらのプライマーを用いて増幅したものについてダイレクトシークエンスを施行中である.他方,AFPの蛋白を用いたアミノ末端一次構造については,肝細胞癌5例,肝芽腫1例,AFP産生性消化管腫瘍2例,臍帯血由来AFP各々について純化精製後,気相シークエンスアナライザーを用い,約20個を決定した.この結果においては,個々の症例においてアミノ末端はheterogeneousであり,本研究者らが以前肝細胞癌1例ならびに臍帯血由来AFPにおいて報告した結果(Cancer Res.,37:3663-3667,1977)を確認すると同時に,この不均一性が単なるプロテアーゼによる消化の結果ではなく,疾患特異性を示唆する可能性が得られた.さらに,アミノ酸コード部分を検索することにより,肝細胞癌に特異的な変異が検出される可能性が示された.
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