研究概要 |
本研究期間に得られた新たな知見。 1.ヒト肝細胞癌組織においてTGFalphaおよびその受容体であるEGFRは高い頻度で発現していた。TGFalphaの発現は高分化型肝癌において高く、EGFRの発現は低分化型肝癌において高かった。弱いTGFalpha発現を示しEGFR過剰発現を認めた肝癌は治療後の再発が高い傾向を認めた。TGFalphaおよびEGFRの発現は増殖の指票と考えられるPCNA発現とは有意の関連性を示さず、形態的変化、血管新生などとの関連性も考えられた。肝癌周囲の表癌部にも強いTGFalphaの発現を認めたがEGFRの過剰発現は観察されなかった。 (第35回日本消化器病学会大会報告) 2.TGFalpha antisense oligonucleotidesの添加により培養肝癌細胞の増殖能は30-50%抑制された。random oligonucleotidesは全く抑制を示さなかったことから培養肝癌細胞における増殖因子としてTGFalphaの作用が確認された。 (第29回日本肝臓学会総会報告) 3.血清TGFalpha値は健常者、慢性肝炎、肝硬変、肝癌合併肝硬変でそれぞれ16.6±10.0,35.4±38.7,71.6±83.7,84.2±71.4(±pg/ml)と肝病変の進行に伴い上昇した。血清アルブミン値と負の相関、血清AFP値と弱いが正の相関を示した。同一患者において血清TGFalpha値の変動を追えた10症例では肝癌発症後、有意にTGFalpha値は上昇した。 (第28回日本肝臓学会東部会報告,1994年アメリカ消化器病学会報告予定)
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