研究概要 |
生体内で唯一のヒスタミン合成酵素であるL-ヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)は、好塩基球/肥満細胞に発現し、その発現調節はアレルギー反応の調節に重要である。我々はHDCの発現調節を解析すべく、HDC遺伝子をクローン化し、平成5年度にはその全構造を明らかにし、全長24kbにわたり、12のエクソンから構成されており、サザンブロットの結果、単一の遺伝子であることが確認された。またPrimer extension解析の結果、転写開始点は第一エクソンの5′側92上流であることがわかった。平成五年度に計画した研究は全て達成され、成果はJ.Biol.Chem.269:1554-1559,1994に掲載された。更にHDC遺伝子の5′側の解析が進み、2000bp以上の塩基配列が決定され、プロモーター領域にあるTATA様配列、GCbox,CACCbox,GATAconsensus sequence,LBP-1結合配列など種々の転写因子の結合部位が想定され、それらの機能的解析に着手した。HDC遺伝子の5′側上流1000bp以内にGATA転写因子が結合しうる部位が数個存在する。GATA転写因子群は血液細胞の分化に関与しており、特にGATA-1及びGATA-2は肥満細胞の分化に重要な役割を果たしていると考えられている。実際GATA-2プローブを用いてKU-812F,HMC-1の核抽出液についてゲルシフトアッセイを行ったところ、高い結合活性が認められた。このことは好塩基球や肥満細胞の分化とともにHDC遺伝子の発現誘導にGATA-2が関与していることを示しており、このことを明らかにするためにリポーター遺伝子を用いてdeletion assayを施行したが、今のところGATA転写因子が機能していることを示す結果は得られていない。現在-273〜-153までの間にsuppressive elementがあることを示す結果が得られており、今後更に検討が必要である。
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