研究概要 |
C57BL/6同系マウスから、メチルコラントレン誘発された低一無免疫原性線維肉腫である、MCA102,205,203に対して、IL-2,IL-4,IL-6の遺伝子導入実験を実施した。実際に、これらのサイトカイン遺伝子を導入する前に、これらの線維肉腫に対して、最も効率よく遺伝子導入を行うための方法および至適条件について検討した。遺伝子導入方法としては、腫瘍がIn vitroで培養プレートに強く固着する性質があることから、リン酸カルシウム共沈法、リポフェクション法を選択した。導入遺伝子としては、β-galactosidase発見ベクターである、Lac-Zを導入した。導入された腫瘍には、β-galactosidaseが発現するため、5-bromo-4-chloro-3-indolyl-β-D-galactopyranoside(X-gal)による染色によって腫瘍細胞が青染し、肉眼的に遺伝子導入効率が確認できる。これまでの導入実験結果では、リポフェクション法は、リン酸カルシウム共沈法に比して、遺伝子導入効率が高いことが判明した。現在、このリポフェクション法において、最良の遺伝子導入効率を得るため、トランスフェクションに必要なC-DNA、リポフェクチン量について詳細な至適条件設定を実施している。実際に導入する遺伝子は、ネオマイシン耐性遺伝子を導入した発現ベクター、BMG-Neoのsal-I siteに各サイトカインC-DNAを挿入して作成された、BMG-Neo-mIL-2(-mIL-4,-mIL-6)を使用する予定である。これらのベクターは、E.coli(JM109)にトランスフェクションし、大量培養したのち、実際の腫瘍細胞ヘトランスフェクションするためのプラスミドに抽出精製した。今後、各サイトカイン遺伝子を腫瘍細胞に導入し、サイトカイン産生腫瘍細胞を作成する。遺伝子導入腫瘍細胞は、まず、同系マウスに接種し、その免疫原性を検討する。その後、担癌マウスにおける、脾細胞、腫瘍所属リンパ節内におけるT細胞レパートリーの変化等について検討する。さらに、遺伝子導入腫瘍細胞担癌マウスからリンパ球を採取し、In vitro sensitization(IVS)培養法、あるいはαCD3抗体感作培養法を実施し、誘導・増殖されたT細胞の抗腫瘍効果について、In vivo,In vitroで検討する。検討内容としては、サイトカイン遺伝子導入腫瘍細胞の担癌宿主から誘導されたエフェクターT細胞が親株の腫瘍細胞に対して治療効果があるかどうかを、まず確認する。その後、親株腫瘍細胞、遺伝子導入腫瘍細胞、各々の担癌宿主から誘導されたエフェクター細胞の抗腫瘍効果、免疫学的性質等について比較検討することにより、担癌宿主における、エフェクター前駆細胞の誘導、T細胞の腫瘍抗原認識過程における各種サイトカインの役割を明確にする。
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