研究概要 |
1)SP-AとSP-Dの単クローン抗体を用いたsandwich ELISA法により、各種肺疾患におけるSP-AとSP-Dの血清での定量を行った結果、血清SP-A,SP-D値は特発性間質性肺炎(IPF),膠原病性間質性肺炎(IPCD)、肺胞蛋白症(PAP)で著明高値を呈した。血清SP-A,SP-Dの測定はIPF,IPCD,PAPの診断およびIPF,IPCDの活動性、PAPの重症度の判定に簡便な血清マーカーとして有用であった。また膠原病患者において、間質性肺炎の合併の有無をスクリーニングし得る血清マーカーと考えられる。また、SP-A,SP-Dの単クローン抗体を用いた間質性肺炎の免疫組織学的検討では、血清SP-A,SP-D上昇の機序につき肺胞II型上皮細胞の肥大,増生の関与が示唆された。本研究により、間質性肺炎の診断や治療効果、予後の判定などが可能となり、さらには肺の線維化における肺胞II型上皮細胞の役割が明らかにされていくことが期待される。 2)喫煙者では非喫煙者と比較して血清SP-A,SP-D値は有意に上昇し、喫煙による肺傷害を血液学的に検出できる可能性を示した。逆に気管支肺胞洗浄液中のSP-A,SP-Dは喫煙者で有意に低下していた。 3)肺癌におけるSP-Dの単クローン抗体を用いた免疫組織学的検討では、原発性肺癌か他臓器原発癌かの鑑別に有用であり、SP-Aと併用することでさらに診断の向上が可能であった。
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