研究概要 |
はじめに)我々は1993年にヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)のプロスタサイクリン(PGl_2)生に対して末梢血単球で作成したconditioned mediumやサイトカインがいかなる影響を与えるかを研究し報告した(K.Watanabe et al.Mononuclear cell-conditoined medium enhances thrombin-stimulated PGl_2 production by human umbilical vein endo-thelial cells culture.Prostaglandins Leukotrienes and Essential Fatty Acids 49:675-681,1993).すなわちTNF-alpha,lL-beta,lFN-_Yなどのサイトカインは単球のconditoined mediumと同様にいずれもHUVECのPGl_2産生を促進した。今回はHUVECのPGl_2産生にいたる細胞内情報伝達機構,ことに細胞内カルシウム濃度([Ca^<2+>]_iの上昇に上述のサイトカインがいかなる影響を及ぼすかを検討した。 方法)Jaffeの方法に従いHUVECを分離培養しpassage2〜3の細胞をT_<175>に植えた。Sub-confluentになった時点でTNF-alpha(200U/ml),lL-beta(10U/ml),lFN-Y(5000U/ml)などのイトカインを加えさらに24時間培養した。その後細胞を剥離しFura-2をラベルし,トロンビン刺激による[Ca^<2+>]_iの上昇を蛍光分光光度計で測定した。トロンビンは2,1,0.5,0.25,0.125,OU/mlという濃度を用いた。 結果と考案)lFN-Y(5000U/ml)で前処置したHUVECはその後のトロンビン刺激による[Ca^<2+>]_iの上昇がコントロールに比して促進されていたが、TNF-alpha(200U/ml)やlL-beta(10U/ml)で前処置したHUVECはトロンビン刺激による[Ca^<2+>]_iの上昇がコントロールに比して抑えられていた。以上よりTNF-alpha,lL-beta,lFN-YなどのサイトカインはいずれもHUVECのPGl_2産生を促進するが,PGl_2産生に至る細胞内情報伝達機構,ことに[Ca^<2+>]_iの上昇に対する影響はサイトカインにより異なっており,更なる解析が必要である。
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