研究概要 |
1.筋萎縮性側索硬化症(ALS)剖検例の脊髄(腰髄)を抗ヘパラン硫酸モノクローナル抗体(HepSS1)および抗ニューロフィラメントモノクローナル抗体(抗Nf)で免疫染色(光顕12例、電顕3例)した。光顕レベルの観察で、脊髄前角の全てのスフェロイドは両抗体に免疫染色陽性であることが確認された。電顕レベルでは、HepSS1および抗Nf共にニューロフィラメント上に局在し、ニューロフィラメント間のマトリックスには免疫反応(銀粒子)は稀であった。このことより、ヘパラン硫酸様物質はニューロフィラメントに極めて近接して局在していることが明らかにできた。 2.Wistarラット(24匹)にIDPN(β,β'-iminodipropionitrile)(和光)0.5ml/kgを7日ごとに腹腔内投与した。IDPN1回投与では対照例と差がなかったが、IDPN2回投与により髄外前根に軸索腫大が認められ、投与回数を増やすごとに軸索腫大は前角内にも認められるようになり、その大きさを増した。IDPN6回投与により、大型前角細胞の胞体より大きなスフェロイドが前角内に形成された。HepSS1で免疫染色すると、形成初期の小さな軸索腫大から大きなスフェロイドまで免疫染色強陽性であった。また、HepSS1免疫染色はCDSNSヘパラン硫酸(completely desulfated,N-sulfated heparan sulfate)によって完全に吸収されたが、CDSNAcヘパラン硫酸(completely desulfated,N-acetylated heparan sulfate)やNDSNAcヘパラン硫酸(N-desulfated,N-acetylated heparan sulfate)では吸収されなかった。以上のことより、ヘパラン硫酸様物質は軸索腫大形成の初期より関与していることが明らかにできた。また、ヘパラン硫酸には多種多様の分子種があるが、スフェロイド形成に関与しているヘパラン硫酸様物質はCDSNSヘパラン硫酸か、これに類似した物質と考えられた。
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