研究概要 |
老年病研究所附属病院において剖検された症例の中で,死亡前のMRI(0.2T)検査で大脳白質にT2強調画像(TR2000/TE110)にて散在性に高信号域がみられた症例を対象に検索した.症例は6例(53〜88歳,MRI撮像から死亡までの期間は16日以内が4例,他の2例は41日と4カ月.1例は固定後にもMRIを撮像)で,約2週間ホリマリンに固定後,MRIの断面にできるだけ沿うように5mm間隔で水平断し,写真撮影をした後,型の如くパラフィン包埋大切片を作成した。HE,HE+LFB,Mallory染色,Bielshowsky染色,抗GFAPと抗neurofilament抗体を用いた免疫染色などを施し,MRI画像所見,肉眼所見,組織所見を対比検討した. 結果:(1)大脳白質にみられたT2強調画像での高信号域の中で,6〜7mm大以上で比較的強い信号強度で不規則な形態を示すものの大半は陳旧性の小梗塞であった。(2)MRI上約2〜5mm大で脳室と同程度の高信号を示す部位に相当するところには肉眼的に明らかな梗塞巣はなく,対応すると考えられる部位には血管を中心に髄鞘の淡明化がみられた.髄鞘・軸索の断裂や星膠細胞の増生はみられなかった.これらの近傍の大脳白質の血管には広汎に動脈壁の肥厚や小血管周囲の海綿状変化もみられた.(3)被殻などにみられような大きな血管周囲腔(Virchow-Robin腔)の拡大はこのような部位にはみられなかった. 考察と結論:高齢者で高頻度にみられる大脳白質のT2強調画像上の微細な高信号域は,主として小梗塞と血管周囲の淡明化よりなっており,両者はMRI上,大きさ・形態・信号強度などよりほぼ区別できた.血管周囲の髄鞘の淡明化は,単なる加齢的変化ではなく,病理学的には動脈壁の肥厚を基盤とした循環不全に起因した病変を反映しているものと考えられた. 追記:研究発表覧には補助金にて購入した機器を利用して行った研究業績も記入した.
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