研究概要 |
[目的]神経変性疾患の原因として,フリーラジカル除去機構の異常が近年注目されている。アルツハイマー型痴呆(DAT)においても,フリーラジカルの除去機構の異常が想定されているが系統だった検討はなされていない。そこで,我々はDAT患者皮膚線維芽細胞を用いてフリーラジカルの除去機構の異常を検討した。 [対象と方法]DAT患者皮膚線維芽細胞よりRNAを抽出した。superoxide dismutase (SOD), glutathion peroxidase (GPX), catalase (CAT) mRNAの発現をNorthern blot analysisにて測定した。DATの経過異なる3群(A群:急速に悪化する群 8例, B群:緩除に悪化する群 13例, 3群:ほとんど不変の群 7例) (Urakami K et al: Acta Neurol Scand 80: 232-237, 1989)に分類し,その臨床経過とSOD mRNAの関連を検討し, DATの経過の異なる3群の初期に鑑別可能か否かを評価した。 [結果]DAT患者の皮膚線維芽細胞においてSOD mRNAは異常を示した。GPX, CAT mRNAの発現には異常がなかった。DATにおけるSOD mRNAの発現の低下は,A群で著しく,次いでB群、C群の順であった。 [まとめ]DATにおけるフリーラジカル除去の異常は, SODが主因であることを確認した。SOD mRNA低下の程度が強いほど, DATの症状の進行が早い傾向を認めた。SODの検討は, DATの経過の異なる3群の鑑別診断に役立つ可能性が示唆された。
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