研究概要 |
私共は最近,特異な臨床病理像を呈する遺伝性糖脂質蓄積症を世界で初めて見い出し,“A new syndrome associated with β-glucocerebrosidase deficiency and a mosaic population of storage cells"と題して報告した(Acta Neurolog Scand 1992;86:407-420)。本疾患は,最新版(第11版)のMcKusickにて,従来のGaucher病と区別され,231005:Gaucher-like disease(Pseudo-Gaucher disease)として新しく登録された。平成5年度はPCRを用いてβ-glucocerebrosidase遺伝子の点突然変異のうち,Leu-444 to Pro,Asp-370 to Ser,Pro-415 to Arg,Val-394 to Leu,Ser-364 to Thr,Cys-342 to Gly およびTry-312 to Cysをスクリーニングした。平成6年度は,既知のライソゾーム酵素を可能な限り測定し,本疾患の多疾患の多酵素欠損症の可能性を検索したが,β-glucocerebrosidase以外に欠損酵素は見い出し得なかった。しかし,肝・膵臓の脂質分析ではglucosylceramideの有意な増量に加え,微量ながらlactosyl ceramideの増量を認めた。本年度は当初の計画に従い,sphingolipid activator protein2(SAP-2);β-glucocerebrosidase activator protein2を肝臓より精製し,その量と性状を従来のGaucher病2型患者のそれと比較検討したが,有意な差は認めなかった。最近,マウスにおいてglucocerebrosidaseとthrombospondin3の中間にmetaxinと名付けられた新しい遺伝子が発見され,1つの遺伝子の異常によって隣接する他の遺伝子の異常も生じ得ることが判明した。本症候群も,このcontiguous gene syndromeにより発症する可能性が示唆される。
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