研究概要 |
変性性神経疾患の中でも運動ニューロン病は原因が全く不明であり,治療法も現在のところ皆無の状態にある.近年,運動ニューロン病での核酸代謝異常や,遺伝子異常が報告されているが多くの弧発性運動ニューロン病での分子生物学的アプローチはその端緒についたにすぎない.本研究では運動ニューロン病の脊髄前角細胞における核酸代謝レベルの変動の有無を明らかとすることを目的とした.まず,運動ニューロン病発症と連鎖している染色体を決定するためにリンパ球からDNAを抽出しVNTR34種を用いて連鎖解析を行った.ついで,Rosenらの報告に準じてSOD(superoxide dismutase)遺伝子のうちexonl,3,5遺伝子,さらに神経成長因子,神経成長阻害因子,軸索流に関係する細胞骨格蛋白,タウ等の遺伝子レベルでの発現状態および異常の有無を変性性神経疾患以外で死亡したコントロール脊髄と対比して検討した.本年度は主としてVNTRおよびSODについて検討したが,自検運動ニューロン病症例においては有為な連鎖を得ることができなかった.これにはSOD遺伝子が家族性運動ニューロン病のうち10%内外にしか連鎖していないこと,さらにはVNTRでは編み目が大きく検出し得ない可能性が原因として考えられる.今後はマイクロサテライトを用いた,さらにきめの細かい連鎖解析を行っていく予定である.
|