研究概要 |
冠微小循環の局所で百日咳毒素(PTX)感受性G蛋白(Gi/Go)を機能的に抑制するin situの実験モデルを開発し、冠潅流圧低下時の自己調節性冠微小血管拡張におけるGi/Goの関与を検討した。〔方法〕麻酔開胸犬26頭にて、左室表面の微小動脈を浮動型対物レンズ法で観察した。実験中の心搏数と大動脈圧は一定に保った。Protocol-1:PTX(n=6,300ng/ml)またはそのvehicle(V,n=6)を左室表面観察部位に2時間superfusionし、その後Giを介して血管を収縮するα_2-agonist(BHT920,1,10,100μM)をsuperfusionした。Protocol-2:同様にPTXまたはVを2時間superfusionした後、観察血管の本幹近位部に設けたhydraulic occluderを調節して、冠潅流圧(CPP)を60,40mmHgに順次下げ最後に完全閉塞(OC)とした。〔結果〕vehicleまたはPTXのsuperfusionのみでは冠微小動脈径は変化しなかった。 BHT920はvehicle群で内径100μm以上の冠微小動脈を有意に収縮したが、この収縮はPTXの前処置群では認められなかった(表1)。vehicle群では潅流圧低下により細動脈(内径100μm以下)は有意に拡張したが、PTXの前処置でこの反応は消失した(表2)。 〔総括〕本研究により、PTX superfusionでin situに冠血管のGi/Goの機能を阻害したモデルが作成された。Gi/Goが冠細動脈の自己調節性拡張反応を担っていることが示され、近年の報告ではATP-sensitive K^+ channel(K^+_<ATP>)がこの反応に関与することが示されていることより、K^+_<ATP>を介するこの反応の上位機構でGi/Goが機能していると推定された。
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