研究概要 |
血管トーヌスの調節機構において、最も重要なものにミオシン軽鎖の可逆的リン酸化反応が考えられている。この反応において、脱リン酸化反応を触媒するミオシン結合型プロテインホスファターゼ(MBP)にその活性調節機構の存在が強く疑われ、新しい血管トーヌス調節因子として注目を集めている。今までの研究より、MBPはタイプ1δホスファターゼ(PP1δ)で、58kDのミオシン結合サブユニット(M-Sub)と38kDの触媒サブユニット(PP1δc)より構成されていると考えられている。今回は、PP1δcのcDNAクローニングならびにM-Subに対する抗体を作成し、MBPの構造に関する検討を行った。ニワトリ砂嚢平滑筋およびヒト大動脈よりPP1δcのcDNAクローニング・シークエンス解析を行ったところ、ラットPP1δcと各々アミノ酸レベルで99%、100%の高い相同性を有していた。M-Subに対するモノクローナル抗体(Ab-M)は、砂嚢平滑筋ホモジネートにおいて、130kDのタンパク質のみと交叉反応を示した。Protein-Aを用いた免疫沈降により、砂嚢平滑筋ホモジネートにおいてAb-Mにより130kDタンパク質と共にPP1δcが免疫沈降した。M-Subの組織分布は、脳、脾臓、心筋、腎、肺など種々の臓器で発現されているものの、大動脈、消化管などの平滑筋組織に特異的に多く、骨格筋、肝ではその発現はほとんど認められなかった。さらに、このAb-Mをプローベに、ニワトリ砂嚢平滑筋よりMBPの精製を、DEAE Sepharose、SP Sepharose、DEAE-Toyopearl 650、Mono S、Mono Qの各カラムを用いて行ったところ、精製MBPは、130,38,20kDの3つのサブユニットより構成されていることが明らかとなった。
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