研究概要 |
我々は循環調節に関与する可能性のある新しい生理活性ペプチドを明らかにする目的で、ラット血小板cAMP増加を指標に、ペプチドの系統的検索を行い、ヒト褐色細胞腫より“アドレノメデュリン"(AM)を発見した。本ペプチドは52個のアミノ酸よりなる新しい生理活性ペプチドで、ラットに経静脈投与した時、強力で長時間持続する降圧効果が認めらた。また、AMは副腎髄質以外に、肺,腎,心,血管などで生合成されていることが明らかになっている。特に、血管内皮細胞では、エンドセリンに匹敵する量で、生合成・分泌されていることが判明した。さらにAMは血中でもかなりの濃度で循環しており、高血圧症、腎不全および心不全などの疾患で増加していることが明らかになり、AMは新しい血管作動性の循環調節因子である可能性が高いと考えられた。 AMの生合成機構や生体内での役割を明らかにするため、AMのcDNAを単離し、核酸の構造解析を行った。AMの前駆体にはAMのシークエンスばかりでなく、proadrenomedullin(proAM)のN末に、C末端がアミド化されている20個のアミノ酸よりなるまったく新しい生理活性ペプチドproadrenomedullin N-terminal 20 amino acid(PAMP)が含まれている可能性が判明した。我々は、PAMPの生体内での存在を明らかにし、さらにPAMPも強力な降圧ペプチドであることを証明した。また、PAMPはウシ副腎髄質培養細胞からのカテコラミン分泌を抑制することが判明した。以上の事実より、AM前駆体より、AM以外にPAMPが新しい生理活性ペプチドとして生合成されており、両ペプチドが協調して循環調節に関与している可能性も考えられる。AMやPAMPの発見は新しい循環調節機構の存在を示唆するものであり、今後数年のうちに、AMやPAMPによる新しい循環調節機構が明らかになってくるものと思われる。
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