研究概要 |
【目的,方法】本研究では、交感神経興奮時、心臓に於て変時作用・変力作用及び冠血管抵抗変化がどの様に惹起されるのかを、同一心で同時に検討した。200-300gのウイスター系雄ラットを用い、麻酔開胸しKrebs-Henseleit液にて流量一定で逆行性に灌流した。その時の冠灌流圧、左室圧とそのdp/dt及び心拍数を測定した。また、右房からの灌流液よりnor-epinephrine(NE)濃度、動静脈酸素含有較差などを測定した。硫酸アトロピン投与下に、1ms,supramaximal voltage,0.2,0.5,1.3Hzを用いて、脊髄のT_1-T_5で90秒間の電気刺激を行った。 【結果】刺激周波数の上昇に伴って、心拍数・左室圧・左室dp/dt・NE濃度・酸素消費量の増大が見られた。心拍数と灌流液中のNE濃度は、90秒間の刺激期間中は、上昇し続けたが、左室圧やそのdp/dtは刺激開始30秒以内に最大値に達し、その後の60秒間は漸減した。これらの現象は、高周波刺激に於てより顕著に現れた。また、冠血管抵抗は交感神経開始30秒後に上昇し、それには周波数依存性が見られた。しかし、その後は刺激前値にほぼ復した。 【結論】NE遊出量から示されるように、種々の程度の交感神経刺激下で心拍数、左室圧及び酸素消費量は上昇を示した。この間、冠血管抵抗が一過性に増大するということは認められるものの、有意に減少する事実はみいだせなっかた。adenosine投与下で充分な血管拡張が得られていることにより、冠血管トーヌスの調節については、従来の概念を再考すべきと考えられた。また、90秒間刺激による、変時・変力作用の各反応性に於て、心筋のNEに対する反応性の低下が示されたが、この間の心筋酸素消費量は著名に増大しいわゆる“O_2waste"現象が示唆された。
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