研究概要 |
血液細胞の増殖・分化には種々の転写因子の関与があり、GATA転写因子群もその一つである。GATA-1は赤芽球、巨赤赤芽球、肥満細胞に特異的に発現し、GATA-2は未分化な血液細胞に発現し、GATA-3はT細胞に特異的に発現している。本研究においては小児白血病の細胞学的診断や病態解明を目指して、株化または新鮮白血病細胞におけるGATA因子mRNA発現の様態を解析した。結果は次ぎの通りである。1.株化白血病細胞におけるGATA因子発現。急性リンパ性白血病(ALL)細胞株22株について検索し、GATA-1とGATA-2のmRNA発現はなく、GATA-3mRNAはT-ALL細胞株(13株)の全例で発現していたが、B-ALL細胞での発現はなかった。2.非株化白血病細胞におけるGATA因子発現。急性骨髄性白血病(AML)15例中GATA-1は2例(M0,M7),GATA-2は6例で各mRNAの発現が認められた。慢性骨髄性白血病(CML)急性転化3例中2例でGATA-1とGATA-2mRNAの発現が認められた。なお、AMLとCMLでのGATA-2mRNA発現はCD34陽性細胞のみであることが判明した。ALL23例はGATA-1、GATA-2共に陰性。GATA-3はT-ALL8例全例とAML1例(CD34+,GATA-2+,Mo)で発現が認められた。以上、血液細胞各リニージに特異的なGATA因子群の発現は小児白血病細胞においても保持されていることが判明した。また、GATA-2発現はAMLやCMLではCD34陽性細胞に認められるが、ALLのそれでは発現を欠くことから、GATA-2因子の発現は骨髄系へコミットした幼若細胞でみられることが判明した。
|