研究概要 |
小児気管支喘息の多くは、ダニ抗原で誘発されるものが多い。その90%は6歳までに初発するが全体の70%前後は17〜18歳頃までに寛解状態あるいは完全治癒が得られる。しかしながら、近年、小児気管支喘息の発症数は増加し、その死亡率は1〜2%に達し、社会的関心は高い。思春期における気管支喘息の治癒的治療への道筋をつけるため、ダニ抗原誘発気管支喘息患児の免疫学的治癒起点を解析した。 ダニ抗原特異抗原刺激により誘導されるT細胞のIL2反応性の獲得をアレルギー反応における免疫学的指標としてとらえ,これらの測定系を用いて思春期の寛解移行期における気管支喘息患児の免疫学的病態を検討し、さらにT細胞の活性化に継続して産生されるリンホカインの変動について解析を加えた。 リンパ球のダニ抗原特異IL2反応性は、ダニ抗原で感作されている気管支喘息患児ではダニ抗原濃度依存性に亢進を認めた。この反応は、既に生後2〜3カ月で亢進状態を示し、これらの反応は,年齢が増し、症状の改善の認められる症例では相対的低値を示した。寛解に至った症例では,思春期に至っても増悪を繰り返す症例に比較して低値を示した。 ダニ抗原刺激によるIL2産生は非寛解群で高値を示し寛解群では正常化する傾向を認めた。CD4^+45R0^+ T細胞から産生されるIFN-gammaは、ダニ抗原刺激により患児ではむしろ低値を示したが,寛解児ではダニ抗原濃度依存性に高値を示したことから、IFN-gammaは過剰免疫系に対して抗原暴露によりむしろ抑制的に作用している可能性が示唆された。即ち、寛解児では生体がダニ抗原に対して暴露されても、それに反応するヘルパーT細胞の活性化は起こらず、むしろIFN-gammaの産生が誘導されて、IgEを主体とする免疫反応系が抑制されるフィードバック機構が誘導されると考えられた。ダニ抗原により誘導される気管支喘息発作は、患児がダニ抗原に暴露された場合にむしろ免疫系が抑制的に働くことにより、ダニ抗原により惹起される一連のアレルギー反応の誘導が減弱し緩解する可能性が示唆された。 患児のアレルギー症状の発現を誘導する活性化リンパ球及びリンホカイン産生を制御するIFN-gammaなどは、将来、アレルギー疾患発症に対する予防薬、あるいは治療薬となりうる可能性があると考えられる。
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