研究概要 |
1.従来研究の進んでいるHPV 1型感染封入体疣贅と臨床・病理組織の異なる2種の封入体(filamentous type:F1型とhomogeneous type:Hg型と命名)疣贅のそれぞれから2種の新HPV型(HPV 63とHPV 65)のクローニングに成功した(Virology 194:789-799,1993)。臨床・病理組織像とHPV型との関連について検討した結果,F1型は足底に生じる点状角化性病変(punctate wart)の臨床像をとりHPV63と,Hg型は手足に生じる黒色疣贅(pigmented wart)の臨床像をとりとHPV 4,60,65のHPVファミリーと相関することを明らかにし,封入体疣贅の臨床・病理組織像および原因HPVの型に基づく新分類を提唱した(Br J Dermatol 130:158-166,1994)。今後,封入体疣贅はHPVの型特異的細胞変性効果(CPE)を通して,HPVとhost cellのinteractionを研究する上で,特にHPV E4遺伝子のfunctionを研究する上で,重要となると考える。 2.多発性足底表皮様嚢腫の一例では全ての嚢腫にエックリン汗管とHPV 60ゲノムが検出され,HPVのみならず発症病理機構におけるエックリン汗管の重要性が示唆された(J Am Acad Dermatol 30:494-496,1994)。これを受けて119例の手掌足底表皮様嚢腫について病理組織・免疫病理組織学的検討および関連HPV型に関する分子生物学的検討を行った結果,エックリン汗管が高率に検出されること,Hg型封入体を有する嚢腫に相関して検出されるHPV 60とunknown HPV型を含む複数のHPV型が検出されることを明らかにした。以上の研究結果に基づき,長く病因の不明であった足底表皮様嚢腫発症機構について,HPV感染によるエックリン汗管由来の角化性嚢腫という新しい機構を提唱した(Br J Dermatol 132:533-542,1995)。
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