研究概要 |
尋常性天疱瘡(PV)と落葉状天疱瘡(PF)の病態を解明するために、培養表皮細胞が分化の過程で発現する天疱瘡抗原とデスモゾーム抗原の変化を観察した。 1.1.8mMCa^<2+>含有培地では、正常培養表皮細胞は単層および重層部分の細胞接合部位にPV抗原を発現した。二重蛍光抗体法にて、PV抗原の発現様式はdesmogleinと一致した。一方、PF抗原は、単層部位にはほとんど発現はなかったが、重層した表皮細胞にインボルクリンや分化型ケチランと一緒に発現が認められた。皮膚癌細胞株(HSC-1,5,6,KM株)を用いて検索したところ、PV抗原は発現が減弱ないし消失し、他のデスモゾーム抗原は正常と比べて異常な発現様式を示した。 2.二重盲検法で、天疱瘡患者血清(PVi10例、PFi4例、増殖性天疱瘡:1例)の培養表皮細胞との反応性を検索した。その結果、すべてのPV血清および、増殖性天疱瘡血清は培養表皮の単層部位と反応したが、PF血清は重層した部位とのみ反応した。すなわち、培養表皮細胞を蛍光抗体の基質に用いるとPVとPFを血清学的に区別でき、診断上有用であることが確認できた。 3.ウェスタンプロット法では、培養表皮細胞には単クローン性抗desmoglein抗体と反応する130kDaと150kDaの2種類のdesmogleinが存在することが分かった。そのうち、130kDaの分子がPV抗原を発現していた。150kDa分子には必ずしもPF分子が存在するわけではなかった。表皮細胞が重層化する過程で、130kDa分子は相対的に減少し、逆に150kDa分子が増加した。両抗原分子の発現の差異と対応する自己抗体の反応が、PVとPFの2病型を形成するものと考え、さらに研究を続けている。
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