伝染性軟属腫(MC)の小児(15歳以下)131例と成人(18歳から75歳、男性16例、女性24例)40例より採取した材料より、プロテネース処理、フェノール抽出で全DNAを精製し、制限酵素BamHI、HindIII、ClaIにて切断後、アガロースゲルにて電気泳動し、エチヂウムブロマイドDNA染色を行い、紫外線照射下に写真を撮影した。 その結果、6種類のMCウイルス(MCV)DNA切断パターンが観察された。それらは、共通の切断片の存在から、MCV1型と2型に大別され、欧米の報告例との比較から、MCV1型のバリアントが2種類、MCV2型のプロトタイプと3種類のバリアントであることが判明した。MCV1型と2型の比率は、全症例ではMCV1型が93%、2型が7%と欧米と同様に本邦においてもMCV1型が圧倒的に多いことが判った。そのうち、小児例と成人女性例ではそれぞれ、MCV1型が98%、92%と多数を占めたのに比較し、成人男性例ではMCV1型の比率は44%と低く、またHIV感染者では25%とさらに少数でありMCV2型が優位であり、その一部は同性愛者であった。MCVの型と臨床像との相関はみられなかったが、免疫抑制患者では個疹が大きくまた数も多い例がみられ、特にHIV感染者ではAIDS発症ともに拡大する傾向がみられた。 以上より、MCV1型が世界的に広範囲に分布し、MCの主たる原因ウイルスとなっていることを確認するとともに、成人女性例の多くは母親や保母であり小児患者との接触により感染していることが示唆された。またMCV2型によるMCの一部は、特に男性例においては性行為感染症として発症している可能性も示していると考えた。
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