研究概要 |
肺癌の病期診断や治療方針の決定に際して重要な縦隔、肺門リンパ節のMRI診断のために,肺門部のMR断層像と病理組織像とを対比し,肺門部の正常および腫大リンパ節を中心としてその周囲の軟部組織,および肺血管や気管支壁等の信号強度を解析した。検討は主に肺癌切除術後の肺標本を用い,伸展固定(Heitzman法)後にSE法により撮像した。 1.正常肺門部リンパ節はT1強調像,T2強調像でともに,やや高信号を示す気管支壁や血管壁の間の不整形の低信号域として認められ、また周囲の軟部組織や腫大リンパ節からも分離して描出された。脂肪組織は、T1,T2強調像で高信号強度を示して気管支や血管壁周囲等の結合組織に分布し,これが気管支や肺血管壁,またリンパ節の皮膜周囲を強く描出させたものと理解された。 2.正常リンパ節も,腫大リンパ節転移と同様にT1強調像で低信号,T2強調像で高信号を示すとされてきたが,標本MR像では,肺門部の正常リンパ節はT2強調像でも低信号であった。この理由の一つとして、成人肺標本のリンパ節に肉眼的,病理組織学的に強く認められた炭粉沈着の存在を挙げる。炭粉沈着はリンパ節を線維化へ,従って水分量減少へと進行させ,MR信号低下の原因となると考えた。 3.腫大リンパ節はT1,T2強調像で正常リンパ節よりも信号強度が上昇するが,周囲の脂肪組織を含む軟部組織よりも低いために,気管支壁や血管壁,あるいは正常リンパ節等と識別可能である。 4.肺門部の正常リンパ節は短径で1cm以下のものが多く,また気管支や肺血管の間にあって複雑な形をとることも多いため、スライス厚8〜10mmのMRIでは周囲の気管支壁や血管壁,あるいは軟部脂肪組織などとの重なり合いのために低信号域としては分離描出されにくく,比較的信号強度の高い集合像として描出される可能性もあると思われた。
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