研究概要 |
癌治療における放射線療法は重要な位置を占めている。しかし早期副作用としての放射線粘膜炎は避け難く時に食物摂取不能による著しい全身状態の悪化を見る。これに対し我々はアルギン酸ナトリウムとハイドロオキシプロピルセルロース+ベクロメサゾンデプロピオネートを混合した新治療薬を開発し臨床的に投与し有効率92.1%の良好な結果を得ており、さらにこの方法は抗癌剤との併用にともなう著しい粘膜炎をも制御可能でこれらの著しい粘膜炎を制御可能な数少ない方法の1つと考えられる。そこで、ICRマウスを用い15Gy,20Gy,25Gy,35Gyの照射群を作成し、新混合薬の有用性を無処置群、生理食塩水投与群と対比し検討を行った。また照射の2時間前にCDDP10mg/kg(LD10)をマウスの腹腔内に注入しその後照射した化学療法併用群および化学療法単独群(CDDP10mg/kg,15mg/kg)を作成し、この計24群に対し経日的に食物摂取量、マウス体重の変化、生存率につき検討を行い、照射後10日目に食道粘膜面の組織学的検討を行った。結果、食物摂取量の検討では全例2日目より明らかなる摂取量の低下を認め照射線量が多いほど、また同一照射線量では化学療法併用照射群により強い摂取量の低下を認め、マウス体重推移も同様の変動を認めた。20Gy,25Gy照射群における細部の検討では照射単独群、化学療法併用群ともに他群に比し新混合薬投与群はより良好の食物摂取率を認めた。同様に体重推移における検討でも新混合薬投与群は他に比べ体重減少が少なく、組織学的検索で粘膜基底層を認めた事より新混合薬の放射線粘膜炎への有用性が強く伺われた。一方、化学療法単独群では投与4日目をピークに全例強い食物摂取率の低下を認めるが、新混合薬投与群のみこの傾向を認めず2日目よりすでに食物摂取量の再増加を認めた。即ち、この研究の結果新混合薬は放射線に伴う粘膜炎は固より、化学療法に伴う急性粘膜炎をも治療可能と考えられた。
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