28例の難治性うつ病患者においてFMSSを用いてEEを評価した。その結果11名が強いEE、17名が弱いEEと判定された。強いEEの場合には、うつ病相の反復回数が多く、ハミルトンおよびSDSうつ病評価スケールで高得点をとる傾向にあった。強いEEは男性患者に有意に多く認められた。その内、心理教育を受けた者は、強いEE5名(H[+]群)、弱いEE7名(L[+]群)であった(同様に心理教育を受けなかった強いEE群6名をH[-]群、弱いEE10名をL[-]群とする)。心理教育終了直後に行ったFMSSでは、H[+]群中の2名が弱いEEに変化していた。一方L[+]群7名はそのまま弱いEEでとどまっていた。両うつ病評価スケールでは、心理教育の前後において変動は少なかった。 1年後に施行したFMSSでは、H[+]群の内、心理教育によって弱いEEに変化した者の内1名だけは弱いEEにとどまっていた。一方L[+]群の内1名は強いEEに変化していた。心理教育を受けなかった群においては、H[-]群の6名の、内、脱落した2名を除いた4名の内1名は弱いEEへ変化していた。一方L[-]群の10名の内、脱落した3名を除いた7名は全て弱いEEでとどまった。同時点においてハミルトンスケールが10点以下に低下した者は、H[+]群2名、H[-]群1名、L[+]群2名、L[-]群3名であった。L[+]群におけるSDSのみが有意に低下していた。しかし症状形成には多くの要因が関与しており、心理教育の効果を結論づけることはできない。 以上の結果から、心理教育は短期的にみた場合、強いEEを弱いEEへと変化させるために有用であることが示唆されたが、中期的には効果が認められなかった。また、うつ病症状に及ぼす心理教育の効果については確認できなかった。
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