研究概要 |
非アルツハイマー型痴呆で前頭葉に病変の主座がある変性型痴呆で代表的なピック病,進行性皮質下グリオージス,運動ニュウロン疾患を伴う初老期痴呆,Achromasiaを主病変とする初老期痴呆の神経病理学的検索から次のような結果が得られた。 1)前頭葉以外に側頭葉にも病変がみられ,皮質の表層に神経細胞脱落がある。その程度はピック病,Achromasiaを主病変とする初老期痴呆では高度であり,進行性皮質下グリオージスと運動ニュウロン疾患を伴う初老期痴呆では軽度である。2)皮質下白質のグリオージスは皮質の病変とほぼ平行しており,ピック病やAchromasiaを主病変とする初老期痴呆では高度であり,運動ニュウロン疾患を伴う初老期痴呆では軽度である。進行性皮質下グリオージスでは,皮質の病変と皮質下白質の病変とが乖離しており,特異的な病態が存在する。3)ピック病では基底核の病変が高度であるが,その他の症例群では明らかでない。4)ピック病,運動ニュウロン疾患を伴う初老期痴呆,Achromasiaを主病変とする初老期痴呆では,黒質に病変がみられる。5)延髄,脊髄の病変が進行性皮質下グリオージスと運動ニュウロン疾患を伴う初老期痴呆でみられる。6)老人斑やアルツハイマー神経原線維変化などの,いわゆる老人性変化は,これらの症例群では主病変ではない。 結論:前頭葉型痴呆と称される症例群は,前頭葉に病変の主座があるものの,病変の程度やその他の部位の病変の有無などで病因的には異なる疾患が含まれている。皮質表層の病変が痴呆発現に重要な役割を果している,と考える。
|