研究課題/領域番号 |
05670839
|
研究種目 |
一般研究(C)
|
配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
内分泌・代謝学
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
田原 和夫 千葉大学, 医学部・附属病院, 助手 (60241965)
|
研究分担者 |
平井 愛山 千葉大学, 医学部, 助手 (10189813)
下条 直樹 千葉大学, 医学部・附属病院, 助手 (40221303)
|
研究期間 (年度) |
1993 – 1994
|
研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
|
配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1994年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
1993年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
|
キーワード | 甲状腺刺激ホルモン / バセドウ病 / 自己免疫 / 甲状腺刺激抗体 / 動物モデル / キメラレセプター / T細胞エピトープ / B細胞エピトープ / 甲状腺刺激ホルモンレセプター |
研究概要 |
バセドウ病におけるヒト甲状腺刺激ホルモンレセプター(TSHR)特異的T細胞の性質を明らかにする目的で、以下の研究を行った。 1.ヒトTSHR特異的T細胞の解析 (1)ヒトTSHRの細胞外ドメイン蛋白質の発現 ヒトTSHRの細胞ドメインをコードする1.2kbのcDNAフラグメントをpolymerase chain reaction(PCR)にて増幅し、バキュロウイルスに組み込んでSf9細胞で蛋白を発現させた。この産生された蛋白はSDS-PAGEで分析した結果、分子量50kDaであり、しかもヒトTSHR細胞外ドメインの特異的な抗ペプチド抗体で検出された。これをゲル精製して、家兎に免疫し抗体を作成したところ、この抗体は、TSHRと^<125>I-TSHの結合を阻害した。すなわち、この抗体は抗TSHR抗体であり、このバキュロウイスルを用いて作成した細胞外ドメインは抗原として使用できることが明らかとなった。 (2)マウスモデルにおけるTSHR特異的T細胞の解析 ヒトTSHR細胞外ドメインを用いてのバセドウ病患者からTSHR特異的T細胞株の分離は、これまでの試みで成功しなかった。そこで多くの実験上の制約を伴うとヒトT細胞の解析と平行して、マウスモデルによるT細胞応答性を検討した。まず、full lengthとヒトTSHRcDNAをマウス線維芽細胞(RT,H-2^Kハプロタイプ)にリポフェクチンをもちいて遺伝子導入し、ヒトTSHR発現RT細胞株(RT-TSHR)を得た。このRT-TSHRをAKl/Nマウス(H-2^Kハプロタイプ)に免疫し、その脾細胞を解析すると、TSHR特異的な芽球化反応を認めた。すなわち、マウスMHCであるH-2のうち、少なくとも、kハプロタイプはTSHR分子をT細胞に抗原提示できることが明らかになった。 2.抗ヒトTSHR抗体のエピトープの解析 ヒトTSHR特異的T細胞のエピトープとB細胞のエピトープ(抗体のエピトープ)の関係は大変重要な問題と考えられる。そこで、B細胞のエピトープについても検討した。まず、ヒトTSHR細胞外ドメインの一部をラット横体化ホルモンレセプター(LH/CGR)と置換したキメラレセプターを作成した。これらのキメラレセプターのうち、THSまたはLH/CGに反応するレセプター機能を保持したものを用いて、バセドウ病患者の刺激抗体が、これらのレセプターを刺激して、cAMP産生を促進するか否かを検討して、抗体のエピトープを解析した。その結果、刺激抗体のエピトープは、主としてTSHRのN端側の約145アミノ酸の範囲内にあり、患者によりそのエピトープが異なる事が明らかとなった。 3.今後の展望 バセドウ病は甲状腺刺激ホルモンレセプター(TSHR)を刺激する自己抗体が産生されるというユニークな病態を持つ病気である。この病態を解明するには、当然のことであるが、TSHRの免疫応答に関与する全ての因子を考慮する必要があると考えられる。本研究では、TSHR特異的T細胞を実験的に誘導できることが明らかになったので、さらにこの系を工夫することで、抗TSHR抗体を誘導できるモデルが可能と考えられる。その際には、T細胞・B細胞のエピトープ解析、抗原提示細胞の解析なども可能になるばかりでなく、このモデルで得られた結果をヒトに応用することで、バセドウ病の病因を解析するための新たな切り口も見えてくるものと思われる。また、T細胞エピトープとB細胞エピトープの関連性も動物モデルからヒントが得られると思うが、現時点ではB細胞エピトープの解析がバセドウ病の刺激抗体とキメラレセプターを用いてある程度進んでいる。しかし、抗体のエピトープはT細胞エピトープと異なり、立体構造上のエピトープであり、また、患者により異なるので、完全には解明されていない。このように、モデル動物とヒトの研究では、それぞれ一長一短であるので、常に両者の結果を相互に比較しながら、着実に病因に迫ることが大切であると考えられる。
|