研究概要 |
レトロウイルスであるHTLV-I感染に引き続いて起こる成人T細胞白血病(ATL)はしばしば副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHRP)を過剰産生し、高カルシウム血症を合併する。私は、ATL細胞におけるPTHRP遺伝子の活性化機構について研究し、HTLV-Iの産物であるTax蛋白によって活性化されるIL-2/IL-2受容体システムが、PTHRPの産生・分泌を高めること(Endocrinology 1993)、細胞内cAMPセカンドメッセンジャーがPTHRP遺伝子の転写を活性化することを明らかにした(J Biol Chem 1993)。さらにHTLV-I感染によるT細胞の活性化・腫瘍化に伴ってビタミンD受容体が恒常的に過剰発見されること、この受容体との結合を介して活性化ビタミンDである1,25(OH)_2D_3あるいはそのアナログである22-oxa-1,25(OH)_2D_3(OCT)がHTLV-I感染T細胞の増殖およびPTHRP遺伝子転写を抑制することにより、PTHRPの分泌を強力に抑制することを明らかにしてきた(J Biol Chem 1993)。 本年度は、ヒトPTHRP遺伝子の調節領域について分子生物学的検討を加え、下流プロモーター領域にcAMPに対する転写の促進に関わるDNAエレメントが存在すること、さらにその上流には転写を抑える負のDNAエレメント(silencer)が存在することを見いだした(manuscript in preparation)。以上の成績は、PTHRP遺伝子が正および負のDNAエレメントによって複雑な転写制御を受けていることを示唆する。
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