研究概要 |
1.異常T3レセプターの機能解析 全身型甲状腺ホルモン不応症と不垂体型不応症患者から我々がこれまでに同定した異常T3レセプター(TR)(mTR K443E,R338W)をCV1細胞、COS細胞へ発現させ、正常TRの機能に対する作用を検討した。全身型mTR(K443E)と下垂体型mTR(R338W)をそれぞれ細胞に発現させ、T3結合能を測定した所、いずれも正常TRの結合能に比べ親和定数が1/10以下に低下していた。種々のTRE(TREpa12,direct repeat,αMHC,malic enzyme)をCAT-レポーター遺伝子に組み込み、mTRとともに細胞に導入してCATアッセイにて転写活性能を測定した。両mTRとも正常TRより転写活性能は低かったが、特に全身型異常レセプターK443Eは下垂体型R338Wより有意に低下していた。異常TRが正常TRの機能を阻害するドミナントネガチブ作用が、不応症の発症機序に重要である。mTRと正常TRをレポーター遺伝子と共に細胞へトランスフェクトし、このドミナントネガチブの強さを検討すると、下垂体型mTRは全身型のそれに比べ明らかに弱かった。すなわち末梢組織の反応性を反映すると考えられる今回の実験条件下では、全身型および下垂体型不応症の表現型と異常TRのドミナントネガチブ作用の強さは平行していた。現在TSHα-TREレポータ遺伝子を用いた転写活性能測定を行う一方、TR、mTR、RXRと標識TREを結合させゲルシフト法でホモダイマー、ヘテロダイマー形成を解析している。 2.特異なTR遺伝子異常の同定 全身型不応症の9才女児より極めて珍しいTR遺伝子異常を発見した。二塩基が連続して点突然変異を生じ、Phe-451がstop codonに変化したためC端側11個のアミノ酸が欠失していた。患者は知能障害をきたし強い不応症を呈していたが、このtrancated mTRの機能も著しく障害されていた。この異常遺伝子の持つ強力なドミナントネガチブ作用の機序を検討している。
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