研究概要 |
血中SHBG濃度の基準範囲は広く、性、年令によって左右されるが、今回測定した甲状腺機能亢進症患者26例、低下症患者54例、健常者53例の血中SHBG濃度も甲状腺ホルモン(FT4)値と有意の正相関を示した。さらに、血中SHBG濃度測定の臨床的意義を検討するために、Autonomous Functioning Thyroid Nodule(AFTN)を有する患者の各症例毎の手術前、手術後の血中SHBG濃度を測定すると、血中SHBG濃度測定は甲状腺ホルモン作用の末梢における鋭敏な一指標として、手術時期の考慮も含めた臨床評価の一助に活用し得ると考えられた。これら甲状腺ホルモンを含めたhSHBG遺伝子制御をより直接的に評価するため、hSHBG遺伝子のプロモーター領域のクローニングを開始した.即ち,hSHBG遺伝子のプロモーター領域のスクリーニングをヒトgDNA Cosmid Library(Lorist2)を用いて行った.hSHBG遺伝子のエクソン1および1'に相補的なプライマーP1(32mer),P2(33mer)をスクリーニングのprobeとして用い,7個のpositive cloneを得た.これらを制限酵素を用いて消化し,同probeを用いたsouthern blottingを行った結果、異なる長さのプロモーター領域を有すると考えられる2つのclone(phSHBG-2,-5)が得られた。まず、このclone(phSHBG-2,-5)について、Cosmid Mapping Kitを用いて、より詳細なvector近傍からのrestiction mapを作成した。その結果、より長い上流を有していると考えられたphSHBG-5を、pUC(Bam HI site或いはHind III siteに)にsubcloningし直した。Bam HI或いはHind IIIにてこのcloneを消化後、religationし(*)、これらcloneを以前に作成したprobe P2にてscreeningし8ケのcloneを得た。その内、最もpurityの高いと考えられたclone82(Bam HI siteにsubclone),80(Hind III siteにsubclone)をprobe P2を用いてsouthern blotting解析を行った結果、これらcloneは上流約0.5Kbしか含まれていなかった。そこで、restriction map上、近位プロモーターに最隣接する2.2Kb,4.4Kb Hind III切断fragmentを得るために、元のphSHBG-5をHind IIIで消化後、agarose gelからこのfragmentを切り出し、DNAを抽出し、subclooningした(phSHBG-HI,H2)。また、近位プロモーターに最隣接するBam HI fragment 6.5Kbを得るために、先にpUCのBam HI siteにsubcloningされ、Bam HIで消化後religationしたpUC(*)をscreeningし、6.5Kbを含むclone(phSHBG-B1)を得た。以上より、hSHBGのgDNAのプロモーター領域約7Kbのcloningが完了した。今後、このcloneの詳細な解析を行う予定である。
|