研究概要 |
甲状腺未分化癌、膵癌の遺伝子治療の基礎的検討 (1)甲状腺癌における遺伝子異常の解析 ヒト甲状腺未分化癌のras遺伝子解析を行う目的で、K-ras遺伝子のコドン12を含む領域をPCR法にて増幅した。細胞は甲状腺未分化癌株細胞(HOTHC,8305C)と甲状腺乳頭癌株細胞(TC78)を使用し、変異の有無はドットハイブリダイゼーション法を用いて検索した。K-ras12番目コドンの6種の変異コドンを^<32>Pで標識した後、ハイブリダイゼーションを行った。その結果、K-rasについてはいずれも変異を認めなかった。ras遺伝子には、他にN-ras,H-rasがありこれらの変異も検索する必要があり現在、PCR-SSPCとダイレクトシークエンシング法にて検討中である。 (2)HMG CoA還元酵素酵素阻害剤のras p21タンパク及び細胞増殖に与える影響 HMG CoA還元阻害剤(シンバスタチン;SIM)はras遺伝子産物(ras p21)などのファルネシル化を抑制することでそのタンパクの作用を阻害することが報告されている。そこで、甲状腺未分化癌とrasの点突然変異を有する膵癌細胞の増殖に与えるSIMの作用を観察した結果、いずれの細胞も著しく増殖が阻害された。この酵素阻害剤処理によって細胞膜結合型ras p21は減少しており、細胞増殖のシグナル伝達において重要な役割をしめるこのタンパクの阻害が増殖抑制の機序の一つと考えられる。しかし、SIMは点突然変異による活性化rasタンパクのみならず正常rasタンパクの作用をも抑制するためより特異性のある薬剤開発が必要である。
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