研究概要 |
研究代表者は,C1q固相法によってSLE血清中に検出されるC1q結合性物質が免疫複合体ではなくC1qコラーゲン部に対する自己抗体であり,しかもこの自己抗体がC1qを介して腎糸球体に沈着することをこれまでに明らかにしてきた。そこで,本研究では,ループス腎炎におけるこの自己抗体の病因的意義をより包括的に検索する目的で,代表的なループスマウスでありC1q結合活性が高値を示すMRL-lpr/lpr(MRL/l)マウスにおけるC1q結合性IgGの解析およびMRL/lマウス由来抗C1qモノクローナル抗体の作製を試みた。 ヒトSLEとは対照的に,MRL/lマウスにおけるC1q結合性IgGはC1qコラーゲン部に結合せず,さらにペプシン処理でC1q結合活性を喪失した。またそのC1q結合活性はイオン強度依存性であり,また固相C1qばかりでなく液相C1qに対しても結合活性を有した。これより,MRL/lマウスにおけるC1q結合性IgGは抗C1q自己抗体ではなくC1q結合性免疫複合体であることが想定された。従って,抗C1q自己抗体産生クローンは得られず,抗C1qモノクローナル抗体の作製は困難であった。続いて,このC1q結合性免疫複合体の解析を試み,anti-DNAより構成される免疫複合体であることを見いだした。しかも,このC1q結合性免疫複合体は,これまでMRL/lマウスにおいて同定されているself-associated IgG-RFやIgG-RF/anti-DNA,retroviral gp70/anti-gp70よりなる中分子量免疫複合体とは異なった,IgG-RFやDNAの関与を見ない新たな大分子量免疫複合体であった。さらに,このC1q結合性免疫複合体の抗体部分は主にIgG3によって構成されており,腎症への関与が強く示唆された。 そこで,現在,C1qアフィニティカラムを用いてC1q結合性免疫複合体を精製分離し,さらなる解析を試みると同時に,この免疫複合体の腎糸球体への沈着が腎炎の発症・増悪に関与している可能性を検討中である。
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