研究概要 |
増殖性糸球体腎炎の糸球体におけるSPARC/Osteonectinの発現を実験モデルおよびヒトの糸球体腎炎の両者において検討した. 実験的検討:抗胸腺抗体誘発メサンギウム増殖性腎炎(抗Thy-1腎炎)をラットに惹起しこれを用いた. 腎炎惹起前および惹起後1,3,6,10,16日目の腎組織を用いてin situ hybridization法(ISH)によりSPARC mRNAの発現を検討するとともに抗PCNAモノクロナール抗体および抗平滑筋細胞性アクチン抗体を一次抗体とする免疫組織化学によって増殖細胞数とメサンギウム細胞数の変化をもあわせて検討した.増殖のピークは腎炎惹起後3,6日に認められたが,SPARC mRNAの発現は増殖期に一致して高い発現をみた.その局在はメサンギウム領域に認められた.アクチンの染色性もPCNA陽性細胞の増減と一致し増殖細胞およびSPARCの発現担当細胞はメサンギウム細胞であると考えられた. ヒト腎炎での検討:各種糸球体疾患62例の生検腎組織を用いてISHによりPDGF B-chain mRNAの発現を検討したところ増殖の著明なIgA腎症とWHOtypeIVのループス腎炎において強い糸球体内発現をみた.そのうちの3例(IgA腎症:2例,ループス腎炎:1例)および微少変化型ネフローゼ症候群(MCNS)2例の計5例の腎組織においてISHにてSPARC mRNAの発現を検討した.MCNSではSPARCの発現は認められなかったが,増殖の強い3例においてはメサンギウム領域におけるSPARC mRNAの発現が認められた. 結論:以上より実験的糸球体腎炎においてもヒトの糸球体腎炎においてもメサンギウム細胞増殖の存在時にはSPARC/Osteonectinの発現がみられることが明らかになった.SPARC/Osteonectinはメサンギウム細胞増殖のメディエーターであるPDGFの抑制因子であることから生体は腎炎におけるメサンギウム細胞増殖に対する防御反応としてSPARC/Osteonectionを発現しているものと考えられる.
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