研究概要 |
1.糸球体上皮細胞の成熟と老化 ラットにおいて,糸球体上皮細胞は基底膜形成時期に一致し,post-mitotic細胞となり,同時期に中間系FilamentのViemntinが出現し,形態的に足突起形成が確認される。この時期以降糸球体上皮細胞数は変化なく,基底膜延長に対しては突起の延長により基底膜を被覆する。post-mitotic細胞となった後,糸球体あたりの糸球体上皮細胞数は一定で,種々の病態において超微形態的に細胞質内の小器官に変化が観察される。したがって,糸球体上皮細胞の変性老化現象の存在が示唆される。 2.糸球体上皮細胞の培養 糸球体上皮細胞の培養系には2種類の細胞が報告されているが,超微形態,細胞骨格蛋白の解析から,大型樹枝状細胞が,in vivoの糸球体上皮細胞由来である。この培養細胞は細胞増殖マーカーのPCNAが染色されるが,多核化しても,決して細胞数の増加は観察されない。in situの上記性質に一致する。 3.糸球体上皮細胞と塩基性線維芽細胞増殖因子(b-FGF) 糸球体上皮細胞の増殖因子としてしられるb-FGFとそのreceptorは糸球体に存在することをNorthern Blottingで確認した。糸球体成熟段階で,S時期には糸球体上皮細胞,Bowman嚢上皮細胞,近位尿細管にb-FGFの染色が観察されるが,成熟が進むにつれて,近位尿細管に限局してくる。しかし,糸球体上皮細胞の障害,変性が進行するにつれて,再度糸球体上皮細胞質内にb-FGFが染色されてくる。 4.今後の展開 不可逆的糸球体硬化過程のtriggerとして,基底膜からの糸球体上皮細胞の剥離減少に注目してきた。今後は,上記結果から,糸球体上皮細胞の変性,脱分化に注目し検討する。また,b-FGFによるintegrinの発現,c-fos,c-junを介しての細胞内情報伝達系について,分節状硬化病変形成に関連して解析する。
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