研究概要 |
1.目的:重症急性膵炎は、死亡率50%を超え、その治療法の確立が急務とされている。そこでSomatostatinの誘導体薬の一つであるSMS201-995の膵外分泌抑制作用に注目し急性膵炎犬に本剤を投与し膵の循環動態および組織学的変化を検討した。 2.方法:雑種成犬に対し自家胆汁を高圧で注入することにより急性膵炎犬を作成した。実験群はI群:急性膵炎SMS非投与,II群:急性膵炎SMS投与(10μg/kg静注後,10μg/kg/hr持続点滴),III群:Sham Operationとし、大腿動脈圧、門脈血流量および膵組織血流量を測定した。膵組織血流量はレーザードップラー血流計を用いて測定した。 3.結果(1)平均血圧:経過中有意の変動を示さず各群間にも差はなかった。(2)門脈血流量:前値はI群272±24ml/min,II群299±17,III群256±17であった。前値を100とすると、I群では1時間後より有意の低下が見られ、5時間後には59.3%であった。II群では15分後より低下し5時間後に44.3%であった。III群は有意の変動を示さず5時間後に%であった。III群に比しI・II群は門脈血流が低下したが、I・II群間に差はなかった。(3)膵組織血流量 I群は一過性の上昇後、2時間以降は有意に低下し5時間後前値の57.3%となった。II群は15分以降有意に低下し5時間後40.1%となった。有意の変動のないIII群に比しI II群は有意に低下し、I II群間ではI群の低下が有意であった。(4)組織像:光顕下での間質浮腫、出血、細胞浸潤はI II群間に差はなく、II群での間質出血が強かった。 4.まとめ:胆汁注入モデルの急性膵炎犬において、膵組織血流の低下がみとめられた。これはSMS投与群で更に著明であった。一方膵炎時の門脈血流低下も併存し、SMS投与群の方がより強い傾向もあり、肝を始めとする逸脱酵素処理臓器の機能低下による微小循環障害の助長の可能性もあり、急性膵炎に対するSMS201-995の投与には慎重であるべきと思われた。
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