研究概要 |
〔目的〕X線照射済み血液の使用ガイドラインの作成を目的とし、照射後長期間保存による安全性、有効性、照射線量及び、採血後照射時期の違いによる許容保存日数を明らかにする。〔方法〕1.採血直後の新鮮全血にX線照射装置を用い5,15Gyの照射を行い、リンパ球活性(リンパ球幼若化試験;PHA,Con-A刺激)、赤血球膜抵抗、2,3DPG量、血球数、溶血度を検討した。2.全血採血後、遠心分離にて生成した赤血球濃厚液、赤血球MAP(RC-MAP)を用いた。採血1、7、14日後のRC-MAPに15及び30GyのX線照射を行い、42日間保存し経時的に検体を採取、電解質(Na,D,CI)、上清へモグロビン(Hb)濃度について検討した。〔成績〕新鮮全血の照射実験より15Gy照射の新鮮血は血漿K値に注意すれば採血後21日の使用は可能と考えられた。保存7日以上の全血製剤は低線量(5Gy)で充分なリンパ球不活化が得られ、血漿Kの増加も低かった。赤血球MAP(RC-MAP)の照射実験では、血漿K濃度は採血1日後15Gy群では照射翌日よりK値は増加し、採血14日後に60.3、採血7日後15Gy群では照射時K値20.3が照射14日後(採血後21日)に63.7へ、採血14日後15Gy群では照射7日後(採血後21日)ですでにK値は61.4mEq/1であった。上清Hbは血漿Kと類似の変化を示し、採血後照射までの期間が長いほど、また線量が大きいほど照射後の保存可能日数は短い。採血1日後15Gy照射であれば照射後14日以内、採血7日後15Gy照射は照射後7以内に、そして採血14日後15Gy照射は照射後3日以内に使用すべきである。〔まとめ〕新鮮全血、長期保存可能なRC-MAPそれぞれに照射前保存日数、線量に応じた照射後保存可能日数を設定すべきである。製剤別に照射後使用ガイドラインを設定することで、以前は照射済未使用血液は使用されず廃棄されていたのを他に転用することが可能になり血液有効利用が期待できる。
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