小腸/肝同時移植による宿主免疫抑制のメカニズム解明と応用 -移植腸管拒絶防止治療法の開発- 本研究の目的は、移植において宿主免疫抑制をいかに誘導するかであり、実験的に肝ないし脾の免疫学的役割に着目して、モデルを作製検討を行なってきた。近年、小腸移植に肝移植を同時に行なうことで宿主免疫が抑制されるメカニズムが解明されてきた、しかし、移植腸管の拒絶を防止することのみを目的として、常に肝移植を必要とすることは臨床上小腸移植治療の普及に大きな妨げとなる。そこで我々の研究の目的は、肝移植を伴うことなく、同様の免疫学的効果を誘導しうる新しい治療法の開発にあった。移植免疫に果たす脾臓の役割に着目し、脾同時移植による宿主免疫の変化を解明してきた。 今年の研究の成果は皮膚/脾臓同時移植により、宿主免疫抑制をいかに誘導し得るかを明らかにすることで、レシピエントの脾臓を摘出してドナーの脾臓を移植することにより宿主免疫抑制を誘導しうることが明らかにし得た。今後、脾移植および摘脾の時期に関してはさらに研究を進める必要がある。これらの研究により、より理想に近い移植術式の開発が可能と考えている。 研究の進行状態 1.実験的に顕微鏡を用いて、小腸移植モデル、肝移植モデル、小腸/肝同時移植モデルを作製中である。順当に術後の生存数が得られるようなったので、さらに研究を進め小腸移植時における肝合併移植の有効性を明らかにする。 2.脾臓の免疫的効果を明らかにするため、皮膚移植モデルにドナー脾臓を移植、さらにレシピエントの脾臓を摘出してドナーの脾臓を移植して皮膚移植の反応を観察したところレシピエントの脾臓を摘出してドナーの脾臓を移植することにより宿主免疫抑制を誘導しうることが明らかにし得た。今後小腸移植+recipient脾摘グループ、小腸移植+recipient脾摘+donor部分脾のrecipient大網内移植グループ、および小腸移植+donor部分脾のrecipient大網内移植グループを追加し、小腸移植における脾臓の作用機序に関して免疫学的研究を進め、脾臓内リンパ球の宿主免疫に与える影響を明らかにする。
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