研究概要 |
細胞の分化および増殖の異常によって細胞が癌化することが知られているが,本研究では分化および増殖に関連した新規遺伝子を単離することを目的とした.方法としてはPCRを利用したdifferential display法を用いた.前立腺癌細胞株であるLNCapに細胞分化誘導因子であるPMAを添加したものと,無添加のものを用いて,differential display法により発現の差のあるバンドをひろいあげた.これらをゲルより切り出してサブクローニングを行い,シークエンス反応にて塩基配列を解読してデータベースに照会したところ,多数の新規遺伝子断片と思われるクローンが単離された.次に,これら遺伝子断片をプローブとして用いて各種癌細胞株での発現をノーザンブロットで確かめたところ,3つのクローンについては明らかな発現が認められた.まず,クローン9は大きさ約1.7kbと推定され,用いた全ての細胞株に強い発現を認めた。アミノ酸配列ではチロシン脱リン酸化酵素との間にホモロジーが認められた.クローン16-5の大きさは約3.7kbと推定され,これもすべての細胞株に非常に強い発現が認められた.これら2つのクローンは細胞の種類を問わず生存に不可欠な遺伝子である可能性が高いと思われた.クローン15-1は約3.8kbの大きさと推定され,PMA処理したLNCaP細胞でのみ発現が認められ,ほかの細胞株やPMA無処理のLNCaP細胞では全く発現が認められなかった.今後,これらのcDNAの全長を単離し,機能的な解析を行う予定である.
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