研究概要 |
肝細胞癌における細胞変化をとらえる手段としてcDNAサブトラクション法を用いて、肝細胞癌で高発現を示す新しい遺伝子のクローニングを施行した。 ヒト肝細胞癌症例の癌部cDNAと非癌部mRNAをもちいてサブトラクションプローグを作製し、癌部ライブラリーをスクリーニングした。最終的なクローンの選択はノザンブロットで各クローンの発現量を検討し、非癌部に比較して癌部で高発現をしめすクローンを選択し得た。その結果得られたクローンの1つの遺伝子が新しいフィブリノーゲン関連遺伝子(HFREP-1:Hepatocyte derived fibrinogen related protein-1)であることが判明した。 HFREP-1cDNAの全塩基配列を決定した結果、1231塩基対よりなるcDNAでありアミノ酸翻訳部位はシグナルペプチドを含む312アミノ酸からなる蛋白質をコードしていた。また既知の物質との相同性を検索したところフィブリノーゲンβおよびγサブユニット,さらにいくつかのフィブリノーゲン関連蛋白質と高い相同性を有していた。しかし血液凝固に重要な活性部位は欠損しており,凝固とは異なる生物学的活性を有することが予想された。またラットの正常組織および培養ヒト癌細胞をもちいた検討では肝および肝癌細胞に特異的に発現していることが証明された。さらに手術材料をもちいた検討では非癌部と比較して癌部で高い発現を示した症例が55%であり,両部で高発現を示した症例とあわせると85%の症例でHFREP-1は癌部で高発現を示した。 今回の研究成績より肝細胞癌で高頻度に高発現をしめす新しいフィブリノーゲン関連遺伝子HFREP-1がクローニングされ、その発現様式から肝細胞癌の発生,増殖に関与している可能性が示された。
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