研究概要 |
材料と方法:ウィスター系雄ラットの背部を脱毛後,尾側を茎とする2×7cmの乱走型皮弁を肉様膜を含めて挙上した。そして,内頚静脈にシリコンカテーテルを挿入後,5%パテントブルー0.2mlをカテーテルから注入,その30分後に皮弁のdye distance(DD)を測定した。実験群(各8匹)はbFGF100μg/kg/day投与群と対照群である非投与群にわけ,bFGF投与群ではこれを経日的に持続点滴投与した。皮弁作成後1日,2日,3日,4日に皮弁茎を切断し,同7日に皮弁の生着域を観察した。また,皮弁茎切断時に皮弁茎部より2cm遠位の皮弁中央部における切断前・後の血流量を半導体レーザー組織血流計を用いて測定した。また,同様の実験的皮弁において,皮弁下にシリコンメッシュガ-ゼを挿入することで,皮弁と移植床間の血行再開を遮断したモデルを作成し,薬剤非投与群,TxA_2合成酵素阻害剤投与群,bFGF投与投与群における皮弁生着長を比較検討した。 結果:対照群における皮弁生着域では,皮弁作成後1日,および2日切断群では,皮弁の全壊死化を認めた。他方,3日切断群では皮弁の生着を認め,その平均生着面積は4.5±0.5日(cm^2)であった。4日切断群でも皮弁は生着し,その平均生着面積は7.1±0.3であった。bFGF投与群では1日切断群は対照群と同様の結果であったが,2日〜4日切断群では皮弁は生着を示し,その面積はそれぞれ7.8±0.8,5.3±0.9,7.2±0.3であった。つぎに,皮弁茎切断前後の皮弁内血流量をみると,対照群とbFGFの1日群および,対照群の2日群では切断後に血流は途絶した。他方,対照群の3,4日群,bFGF投与群の2〜4日切断群では,切断後の血流量は切断前の20〜30%に低下したが,血流は維持されていた。血行遮断モデルでは,bFGF投与群と薬剤非投与群では皮弁の生着長に差は生じなかった。他方,TxA_2合成酵素阻害剤投与群では明らかな生着長の延長を認めた。
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