研究概要 |
ビリルビン(以下BR)は光エネルギーにより、立体異性体に変換する。このフォトビリルビン(EZ,ZE-BR)は、水溶性で肝または腎のクリアランスの効率がよく、胆汁中または尿中に排泄されやすいと言われる。本研究では、上の機序を利用し、その効率を高めるため直接血液に光を照射し、肺不全の病態の中で最も問題になる高BR血症を治療できるかを検討した。 【実験】照射効率を高める目的で、末梢動-静脈間に外シャントを作成し、特定の波長(510nm)の光線を12時間照射したPT群と照射しないCTL群とを比較した。効果の判定は、血清総BR、非抱合BR濃度(以下TB,IB)、排泄ルートである尿中及び総胆管内胆汁中のTB.IBと、その他各種血清学的パターンの変動について検討した。実験動物種は、豚種を用いた。当初予定した総胆管結紮法では充分に血清BR値が高値に達しないため、高濃度ビリルビン溶液(unconjugated bilirubin powder, 0.1N NaOH,5% porcine albumin, 0.055-M sodium phosphate bufferにより作製)を豚に点滴投与する事により、高度高BR血症が得られた。 【結果】(a)TBの胆汁中への排泄量は、3時間後よりPT群が有意にCTR群に比べ多くなった。(b)TBの尿中排泄量は、PT群で照射30分後より急増しこれが照射中持続した。これに比べCTL群では排泄量は照射中全く増加しなかった。(c)IBの胆汁への排泄は、照射1時間後よりCTL群で低下した。PT群では、排泄量は照射中殆ど変化無く、照射3時間後より両群間に有意差を認めた。(d)IBの尿中排泄は、照射1時間後よりPT群での排泄が増加し、有意差を生じた。 【まとめ】成人高ビリルビン血症に対しても、症例によっては光療法の適応になると思われた。
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