研究分担者 |
斉藤 幸夫 東京大学, 医学部(病), 助手 (50178513)
山形 誠一 東京大学, 医学部(病), 助手
樋口 芳樹 東京大学, 医学部(病), 医員
篠崎 大 東京大学, 医学部(病), 医員
澤田 俊夫 東京大学, 医学部(病), 講師 (50143441)
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研究概要 |
潰瘍性大腸炎に合併する癌および,その前癌病変と考えられているdysplasiaの形態は通常の大腸癌と比べて(1)形態が扁平である,(2)多発傾向がある,(3)周囲に異型度の異なる病変を合併しやすい,などの特徴がある.また一般に癌の特徴はその遺伝子変化に裏うちされているといわれる.したがって,通常の大腸癌と潰瘍性大腸炎に合併した大腸癌との遺伝子変化が異なることが予想される. 平成5年度の研究では,通常の大腸癌および腺腫では60〜70%程度の変異がみられるK-rasの遺伝子変化が,潰瘍性大腸炎に合併した癌・dysplasiaでは10%程度の変異しかみられず,明らかな差異が認められた. 平成6年の研究は,主として癌抑制遺伝子とされるp53について検討した.方法としては,パラフィン固定された切除標本について,p53のモノクローナル抗体であるDO-7を1次抗体として,免疫組織学的に検討した.p53に変異があると,異常なp53蛋白が集積し,免疫染色にて過剰発現という形で検出される(ナンセンス変異を除く).われわれのデータでは,湿潤癌で89%,high-grade dysplasiaで70%,low-grade dysplasiaで57%であるのに対し,腺腫やindefinite for dysplasia,negative for dysplasiaではp53蛋白過剰発現は全くみられなかった.このことから,p53免疫染色による蛋白過剰発現を検討することは,腫瘍の有無を確認するだけでなく,癌合併の指標となるdysplasiaと腺腫との区別する客観的なマーカーとなることが確認された.
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