研究概要 |
代用肛門括約筋として薄筋を選び、本来の肛門括約筋の特性である耐疲労性の筋肉に形質変換させるため,日本白色種,雄性家兎,体重2〜3kgを用い,薄筋を近位側支配神経,および血管を残して剥離し,支配神経をpulse幅0.2m sec.の矩形波の5Hz、10Hzで持続電気刺激した。4週および6週間持続電気刺激したところで、張力計を用いて薄筋の張力を非刺激群と比較すると,刺激群において有意に高い筋緊張が得られ、とくに10Hz刺激群が著明であり、この所見はATP-ase染色にても,薄筋が耐疲労性の特性を有する筋肉に変換されていることが証明された。つぎに薄筋をこの至適条件(0.2msec、10Hz)にて持続的に6週間電気刺激した後、外肛門括約筋が切除された直腸に巻き付け、左坐骨結節に縫着することにより肛門を形態的に再建し、筋移植前、移植直後、移植後6週間の3群に分け、15Hzでの電気刺激時の再建肛門内圧、筋収縮の加重率で検討したところ,筋移植前に形質変換しておいた群で有効な肛門内圧維持可能な生理的肛門機能が得られることが判明した。さらに実験で得られたデータのもとに,下部直腸癌にて肛門を切除せざるを得なかった1例に同様の肛門再建術を行ったところ,完全ではないが再建肛門よりの排便が可能であった。今後はさらに術式を改良しながら症例を重ね,より生理的な肛門再建術を確立する必要があると考えられる。
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