研究概要 |
腫瘍の画像診断に,腫瘍関連抗原に対する抗体を用いることは,抗体のもつ特異性により腫瘍の病理学的性格を反映するため、質的診断を行う上で最も理論にかなったものといえる。我々は大腸癌の転移・再発の質的診断を行うために、大腸癌組織に最も高い発現率を示すcarcinoembryonic antigen(CEA)に対するモノクローナル抗体CEA102を作製し、その臨床応用に取り組んできた。^<131>I標識抗体を用いた臨床応用に続き、今回診断機器として3次元的解析が可能なSingle Photon Emission CT(SPECT)を使用し得る^<111>Inを用い,その体内動態、および臨床応用を試みた。^<131>Iと^<111>Inそれぞれの標識CEA102の体内動態と画像の比較を大腸癌移植ヌードマウスを用い比較検討した結果、^<131>I標識では投与後5-6日目が最も鮮明であったが、^<111>In標識では1-3日目が最も鮮明であった。組織内分布をみると、^<131>I標識では肝、腎における放射活性は4日目以降対腫瘍比は1以下となったが、^<111>In標識では肝脾の対腫瘍比は3日目以降もすべて1を越えた。これらにより両核種の至適撮像時期には差があり、また^<111>In標識はSPECTの応用が出来るため骨髄内再発巣などの評価に有用であるが、肝転移の評価には^<131>I標識が適していると考えられた。大腸癌の画像診断の臨床応用において、^<131>I標識CEA102を用いて施行した20症例の陽性率は15/21(71.4%)で、各病巣別では、原発巣4/4(100%)、肝転移 5/6(83.3%)、局所再発 5/10(50%)、鼠径リンパ節転移 1/1(100%)であった。^<111>In標識CEA102を用いて10例の臨床例を行い、陽性率は7/10(70.0%)であった。直腸癌局所再発は診断機器としてSPECTを用い8例中5例に明瞭に診断することができた。以上よりモノクローナル抗体による画像は空間分解能からみた画像の質としてはCT、MRIに劣るが、質的診断において有用性を示した。
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