研究概要 |
悪性神経〓腫に対する遺伝子治療モデルの開発 1.(実際に行なった方法)ラットのC6及び9Lグリオーマ細胞株、および、これら細胞株と同系のF344(各群N=6)ラットを遺伝子導入実験に用いた。s-myc遺伝子,p53cDNA,c-myc cDNAをそれぞれpCEP4に組み込み発現ベクターを構築し、これらベクターをLipofectin^<TM>処理後、各細胞と懸濁してラットに注入した。 2.(得られた知見)脳内腫瘍形成の抑制 空のベクター,s-myc,c-mycあるいはp53を組み込んだベクターと9L細胞を定位的に脳内に注入したその結果、s-mycを注入したもののみで脳内腫瘍形成が抑制され、他の遺伝子を注入したものは全例腫瘍死した。s-mycを注入して生残した6例中1例では、腫瘍形成後その腫瘍が消失するという経過を辿った。このラットを剖検すると、腫瘍床と思われる部位にマクロファージ、リンパ球等免疫担当細胞の強い浸潤を認めた。これら組織学的所見と、lipofection法による遺伝子導入効率から予想される以上の抗腫瘍効果が得られたことから、このs-Mycによる抗腫瘍効果には宿主の免疫反応が関与していると考えられた。 s-myc遺伝子注入により生残したラットでの9L親株細胞の腫瘍形成の抑制 もし免疫反応が関与しているとすれば、上記s-myc注入により生残した6匹のラットでは9L細胞に対して免疫が成立しているはずと考え、それらのラット及び何も処理をしていないコントロールラット6匹のそれぞれの大腿部皮下に9L細胞のみを注入したところ、予想どおり、コントロールラットでは全例で腫瘍形成を認めたのに対し、先の生残りラットでは6匹全例で腫瘍形成は抑制された。。 3.(考察)s-Mycがどのような分子機序で宿主の免疫応答を引き起こすのか、cytokineの解析等を足がかりに解析を進める予定である。
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