研究概要 |
1、サイトカイン発現レトロウイルスベクターのパネルの作成 マウスの各種サイトカインのcDNAをRT-PCR法でクローニングし塩基配列を確認した後、マウス白血病ウイルスに由来するレトロウイルスベクターへ組み込んだ。これをパッケージング細胞ψCRIPへトランスフェクトし、感染細胞のゲノムDNAのサザン分析を行って高力価のプロデューサー細胞クローンを樹立した。細胞一個当たり1.5コピー以上の高効率遺伝子導入が可能であった。サイトカインとしてはGM-CSF,IL-1,IL-2,IL-3,IL-4,IL-6,IL-10,TNF,LT,INF-γ,G-CSF,M-CSF,SCF,LIF,Oncostatin-M,MIF,及び接着分子のB7(CD28リガンド)のベクターを作成し、このパネルを用いて以下の動物実験を開始した。 2、サイトカイン遺伝子導入腫瘍ワクチンを用いた移植脳腫瘍の予防実験 マウスの低免疫原性メラノーマ株B16にサイトカイン遺伝子を導入してこれを高発現させた上で、10000radのX線照射により不活化し、腫瘍ワクチンとして同系マウスの皮下に投与した。一週間後非導入B16細胞500個を脳に移植し、脳腫瘍の生着を予防できるかどうかを検討した。ワクチンを投与されない群、及び非導入B16をワクチンとした群は全例20日前後で腫瘍死したのに対し、GM-CSFとIL-2またはGM-CSFとTNFを発現するワクチンを投与された群では有意な生存期間の延長を認め、一部のマウスは腫瘍を拒絶した。この結果は腫瘍ワクチン局所で発現されるサイトカインの働きで、宿主の抗腫瘍免疫能が誘導されたことによるものと考えられた。
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