研究概要 |
生体吸収性高分子であるポリ乳酸に延伸操作を行つたポリ乳酸フイルムは良好な“ずり圧電性"を持つ。ポリ乳酸乳酸(以下PLLA)圧電フイルムによる骨形成促進の効果と骨形成に対して最も有効な圧電フイルムの体内における設置方法を決定するために、動物実験を行った。PLLA圧電フイルムは4倍延伸で、延伸配向0°,45°,90°の3種類を用いた。対照群には未延伸のPLLAフイルムを用いた。各群5羽の成熟日本白色家兎を用い、全身麻酔下に、脛骨中央前外側骨膜上にPLLAフイルム(6×12×0.2mm)を縦方向に置き、その上下端を前脛骨筋後面の筋膜に縫合した。6週後屠殺し、脱灰標本とし、H.E.染色による組織学的な観察を行い、新生骨部分の面積を計測した。その結果、組織標本上、対照群中の一例を除き全例に、フイルム設置部を中心に、皮質骨上に新生骨を認めた。45°フイルム設置群の新生骨面積は、対照群に比し、有意に大きかった。また0°及び90°フイルム設置群と比較しても、有意に大きかった。圧電フイルム設置個体群が、対照群に比べ、骨形成が促進されたことより、PLLA圧電フイルムは大きな骨形成促進能を持つ事が証明された。また、45°の方向に延伸されたフイルムを筋の伸縮方向に設置したときに、最大の骨形成が認められたことより、PLLA圧電フイルムの延伸方向に対し、“ずり応力"が作用した時に、最も骨形成促進作用が大きくなる事が証明された。
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