研究概要 |
平成5年度に求めた膝関節に生じる荷重とモーメントに関する数学的な記述の結果を用いて,膝関節に生じる荷重とモーメントの実計測を行った。インストロン材料試験機に,固定治具を介してヒト切断膝関節を屈曲角度30°にて固定した。大腿骨を試験機の基底部分に,脛骨を6軸力計を介してクロスヘッドに固定した。クロスヘッドの上下動により脛骨に前方変位をあたえ,そのときの6軸力計の出力を記録した。前方後方変位は,材料試験機の出力より求めた。前方後方変位以外を0と仮定することにより,先に求めたヤコビアンを用いて,膝関節に生じた荷重とモーメントを求めた。その結果,前方力が生じるのはもちろんのこと,他の膝関節の自由度方向にも荷重とモーメントが生じていることが分かった。数値的には,膝に前方変位を与え前方力が100N生じるとき,外側方力:31N,近位力:73N,伸展モーメント:12Nm,外反モーメント:4Nm,内旋モーメント:2Nmであった。膝の自然な動きを許容せずに,前後方だけを許容したために,このような結果になったと考えられた。この結果は,臨床的な知識に一致するものであり、膝に生じる荷重とモーメントを求める本方法の妥当性を示している,と考えられた。また,本方法を既設の生体関節力学機能試験ロボットシステムに用いて,生体関節の3次元的な力学試験を行うことが可能であることを示した。
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