研究概要 |
骨形成不全症(01)の易骨折性は,コラーゲン遺伝子異常にもとずくことが判明している。しかしI型コラーゲンに例をとってみても,その分子は骨組織以外にも普遍的で,01に特徴的な骨量の減少,骨皮質の菲薄化,骨幹部の著明な萎縮などをきたすメカニズムは、骨基質のコラーゲン異常のみでは説明できない。そこで本研究では,骨幹部皮質骨形成に重要な役割を果たしている外骨膜のcambium layerに存在する微小血管の構造について検討してきたが,今回は,血管における物質透過を,選択的にコントロールするとされる基底膜の構造の電顕的観察をおこない興味ある結果をえた。01骨膜の毛細血管の基底膜を構成するplasmalemmaは薄く,明瞭な2層構造を欠くことが多く,badal laminaの連続性や厚さにも乱れがみられ,pericapillary spaceに存在する横紋構造をもったコラーゲン線推量も少なかった。これらの所見は毛細血管のみでなく細動脈にも共通で,血管の脆弱性を示すものと考えられ,内皮細胞の肥大化とあいまって容易に管腔閉鎖をきたす原因となるものであろう。今回とくに注目されたのは,基底膜周辺に存在するplasmalemmal vesicleの分布異常であった。骨膜に分布する毛細血管はcontinuous capillaryであるため,10nm以上の大きな分子はplasmalemmal vesicleによってのみ管壁を透過できるといわれ,このvesicleは通常plasmalemmaと内皮細胞の間に認められる。01の場合は同部位のみならず,basel laminaやpericapillary spaceにも存在していた。このことは,01では骨膜におけるmetabolic factorsの血液と細胞間の移送にも異常が存在する可能性を示唆しているようである。
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