研究課題/領域番号 |
05671290
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
麻酔・蘇生学
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
佐多 竹良 産業医科大学, 医学部, 助教授 (60128030)
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研究分担者 |
柳原 延章 産業医科大学, 医学部, 助教授 (80140896)
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研究期間 (年度) |
1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1993年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | イソフルラン / プロポフォール / 副腎髄質 / 電位依存性Na^+チャンネル / 電位依存性Ca^<2+>チャンネル / 電位依存性K^+チャンネル / カテコールアミン遊離 / ニコチン性アセチルコリン受容体-イオンチャンネル |
研究概要 |
近年,全身麻酔薬の中枢神経抑制機序として、シナプス伝達における種々のイオンチャンネルの抑制や神経伝達物質の遊離抑制が重要な役割を演じていることが示唆されるようになってきた。今回、著者らは副腎髄質細胞を中枢のノルアドレナリン作動性神経と見なし、この細胞における各種イオンチャンネルおよびカテコールアミン遊離に対する吸入全身麻酔薬イソフルランと新しい静脈麻酔薬プロポフォールの影響を検討した。なお、実験には培養ウシ副腎髄質細胞を用いて行った。 (1)ニコチン性アセチルコリン受容体-イオンチャンネル:イソフルラン(1-6%)やプロポフォール(10-50muM)は臨床使用濃度内でカルバコールによる^<22>Na^+流入を濃度依存性に抑制した。(2)電位依存性Na^+チャンネル:プロポフォール(10-50muM)はべラトリジンによる^<22>Na^+流入を濃度依存性に抑制した。イソフルランは高濃度(4-6%)においては^<22>Na^+流入を抑制したが、低濃度(1-3%)では抑制しなかった。(3)電位依存性Ca^<2+>チャンネル:イソフルランとプロポフォールはともに56mMK^+溶液刺激による^<45>Ca^<2+>流入にはほとんど影響を与えなかった。(4)電位依存性K^+チャンネル:プロポフォールは56mMK^+溶液刺激による^<86>Rb^+流出に対してはほとんど影響をおよぼさなかった。(5)カテコールアミン遊離:イソフルランとプロポフォールはカルバコール、ベラトリジン刺激によるカテコールアミン遊離及び^<45>Ca^<2+>流入を上記で見られた濃度において抑制した。しかし、56mMK^+溶液刺激による反応にはほとんど影響しなかった。 以上のことを要約してみると、イソフルランとプロポフォールはニコチン性アセチルコリン受容体-イオンチャンネルや電位依存性Na^+チャンネルを抑制することによりカテコールアミン遊離を抑制した。一方、電位依存性Ca^<2+>チャンネルや電位依存性K^+チャンネルに対しては両麻酔薬とほとんど影響しなかった。これら、副腎髄質のイオンチャンネルを中枢神経のそれと置き換えてみると、電位依存性Na^+チャンネルは神経軸索での刺激伝導に関与し、ニコチン性アセチルコリン受容体-イオンチャンネルはポストシナプスでのアセチルコリンによる刺激伝達を担っていると考えられる。今回の実験から得られた両麻酔薬による上記イオンチャンネルの抑制効果は、麻酔作用の機序を理解する上で興味深いものと考えられた。現在、脳シナプトゾームを用いてさらに解析を進めておりそれらの結果が期待される。
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