研究概要 |
今までの臨床的検討および実験的検討により,膀胱癌の発生頻度は男性が女性の3〜4倍と高く,ラットおよびマウスではテストステロンを除去すると雄では膀胱発癌が有意に抑制されることが判明している。 今回の研究では、このアンドロゲンの発癌への影響の機序を検討した。即ち,テストステロンからDHTへの変換酵素の阻害剤,5α-reductase inhibitorおよびアンドロゲン受容体阻害剤(anti-androgen)を用いて発癌への影響を調べた。 その結果以下のことが判明した。 (1)5α-reductaseは明らかな抑制効果を示さなかったが、anti-androgenは用量依存的にラット膀胱発癌を抑制した。この事実は、テストステロンの膀胱上皮細胞への作用機序は前立腺細胞で知られているような(5α-reductase-DHT)を介した機序とは異なるものである可能性を示唆する。 (2)また,免疫組織学的検索およびimmunoblot assayにより膀胱上皮にはアンドロゲン受容体が存在することが強く示された。 (3)以上の二つの結果よりテストステロンがアンドロゲン受容体に直接結合して膀胱発癌に関与している可能性が考えられた。 現在,米国では5α-reductase-inhibitorを用いた前立腺癌予防の大規模な臨床研究が行なわれている。膀胱癌は、年々その発生頻度が高まり、また手術後の再発の危険性は非常に高い疾患である。現在,臨床で使用されているanti-androgen剤は副作用は軽徴である。 今回の研究は膀胱癌の予防にanti-androgen剤が有用であるかどうかの臨床研究の発足を促す結果を示したと考えられる。
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